人工乳房誕生秘話

人工乳房開発のキッカケとなった看護師長さんとの出会い

皆様こんにちは。
レリエンスメディケア代表取締役の小林と申します。

平成20年当社レリエンスメディケアは、抗がん剤治療や脱毛症で髪の毛を失った方向けの医療用カツラを販売する会社として、立ち上げを致しました。

平成22年のある日、とある病院で医療用カツラの相談会を開催していた私は、担当の看護師長さんから突然声をかけられます。

「カツラの分け目部分には人工皮膚を使っているわよね。カツラの人工皮膚と同じ素材を使った、乳がん経験者のための人工乳房はそちらで作れないかしら?」

看護師長さんがそう言って持ってきたのは他社の人工乳房でした。私はこの時生まれて初めて「地肌に直接装着する人工乳房」を目にすることになるのです。

本物ソックリの人工乳房

その人工乳房は非常にリアルなものでした。
「見た目がこんなに本物ソックリの人工乳房が世の中にあるなんて・・・」

「どうして当社に作ってもらいのですか?」と看護師長さんに尋ねた私に、看護師長さんはその理由を次のように説明してくれました。

「それはね、乳房の摘出手術をした方にとって、温泉に行く時にはこういった人工乳房が必要なのよ。でもね、車一台買えるくらいに値段が高くて、皆さんなかなか買えないのよね。完璧に自分の胸と同じじゃなくてもいいから、既製品で安く作れないかな、と思って」

「あとこの人工乳房は接着剤を付けて肌に貼り付けるんだけれど、接着剤を地肌に塗ることには、皆さんすごく抵抗があるのよね。だから接着剤なしで肌に付けられる人工乳房を開発してくれないかしら?」

看護師長さんからの突然の打診に、私はかなり戸惑ってしまいました。「カツラしか作ってきたことのない当社で、乳がん経験者向けの人工乳房なんて果たして作れるのだろうか」と・・・。

ものづくりの会社にしかこの人工乳房は作れない!

看護師長さんは話しの中で次のようなことにも触れていました。

「乳房摘出の手術をした後は左右のバランスが悪くなり、アンバランスな体幹を支えようと筋肉や関節に過度の負担がかかることで、それまでなかった肩こりや腰痛に悩んでいる方が多い」

「左右のバランスが悪くなることで、自転車やオートバイでまっすぐ走れなくなる」

人工乳房についてその後調べていくと、人工乳房を作っているメーカーが日本国内でも非常に少ない、ということもわかってきました。

「人工乳房を必要としている人が世の中にはたくさんいるのに、作っている会社が非常に少ない。だったら、自分たちが皆さんに喜んでもらえる人工乳房を作っていったらいいのではないか!」

人工乳房を色々と調べていくうちに、その開発意欲がこの時少しづつ社内で湧いていきました。

シリコンは生き物

まずは知り合いのケミカルメーカーから助言をもらいながら、自分たちで作ってみることにしました。最初ですから全くの手探りです。

予想ははしていたものの、出来上がってくるのはどれもどれも失敗だらけ。
試作用に準備した材料のシリコンは飛ぶように減っていく中、失敗作の人工乳房だけが山のように積まれていきました。

失敗の原因は、数種類のシリコンを混ぜ合わせて作る際の配合率が適正でなかったことと、シリコンという素材そのものの性質をまだよく理解していなかったことでした。シリコンは非常に繊細です。気温、湿度によって配合率や乾燥時間を調整しないと、仕上がりが全然変わってきてしまうのです。

生き物のようなシリコンと格闘しながら、「いつまでこんなことが続くのだろうか?」と先の見えない焦りと不安な時期をしばらく過ごすこととなりました。

完成まで4年という歳月

途中、開発を諦めかけたこともありましたが、いろんな種類のシリコンを試し、繰り返し地道に試作を続けていきながら、平成26年ようやく当社の人工乳房を完成させることができました。

開発を始めた平成22年から4年の月日が経っていました。

販売を始めてからは、人工乳房を使っていただいている皆様より喜びの声を頂戴しています。本当に嬉しい限りです。

平成29年には多くの皆様からご要望のあった「温泉の時に自然に見える人工乳房」を開発することができ、販売を始めております。

レリエンスメディケアの想いは、皆様がいつもの毎日をいつも通り過ごせることです。それはレリエンスメディケアの設立当初から、そしてこれからも変わることのない当社の強い想いでもあります。

katsuhiro_kobayashi